

店主・あかしゆかの自主制作のエッセイ本。
二拠点生活のこと、結婚生活のこと、仕事やこれからのこと。31歳の今に残したい言葉をまとめています。
──「はじめに」より一部抜粋
“私にとって文章とはずいぶんと長い間、その瞬間にしか立ち現れない自分の声を見つけ、記すことだった。それは今も大きくは変わらない。
けれども時間を経て、文章が仕事になり、少なくない人の目に触れる可能性が生まれたことで、「自分の声を聴けている」と純粋に思えなくなる瞬間も増えていった。そうして最近は少しずつ、自分の言葉で何かを書くことから遠ざかっていたような気がする。
それはおそらく、誰でも読めるインターネットの上に、自分の柔らかい部分について記した文章を置くことの暴力性について考えるようになったことも理由のひとつだし、SNSがここ数年で急激に変化してきた、というプラットフォーム側の問題もあるだろう。
いずれにしても、自らの感情を見つめ、それを文章に起こし、しっかりと推敲して「読まれる」ことを意識して書くことが、以前に比べると減ってきたのは事実だ。
私は先日、31歳になった。
がむしゃらにインターネットの上で文章を綴っていた20代後半から数年が過ぎて、いまの私には、インターネットの荒波の中で自分の身の上話をすることにそこまで積極的にはなれない。
けれどもこの数年間でも、私の人生は大きく動いている。結婚、離婚、そして二度目の結婚、二拠点生活、お店をはじめたこと……。その中で私は、何を感じてきたのだろうか。今一度、振り返ってみたい。声を聴きたい。文章を綴ってみたい。そう思うようになっていた。
だから、小さな本を作ってみようと思った。31歳の私にしか書けない表現を残すために。海にもぐるように、深く、深く。”
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発行 :aru
サイズ:A6サイズ
ページ数:78P
表紙の絵 :とつゆう